「コルネリア・バイルシュミット」
「はい」
名前を呼ばれ、コルネリアは前へ出る。一年生の終わりに、年に一度この日のためだけに解放される大聖堂の中心を歩く。待ち望む校長の前まで行って、跪く。
この日コルネリアは、四大精霊のうちのひとつ、水の精霊アンダインと契約する。この先水の魔法を学んでいくことを決めたのだ。
――アイザック先生と同じ魔法を使うことは、魅力的だけど。
アイザックから聞いた、彼の魔法の仕組み。魂を燃料にして青く輝くその炎が、いつかアイザックの魂を焼き付くし使いきってしまうのではないかと、考えてしまったのだ。
――アイザック先生は、わたしが守らなきゃ。
自身の生命を消耗するような魔法ではないことはわかっている。ただ、呆気なく自身が燃やされる可能性を肯定したアイザックの、生命への固執のなさが怖かった。彼の生命を消費させないために、コルネリアは水の魔法を使うことを決めたのだった。
「――我、アンダインの名の下に跪く者なり!」
詠唱を言い切り、忠誠を誓う。
瞬間、なにかが内に――否、まるで自身が水に変化したような錯覚を覚えた。内側からどろりと溶かされていくような錯覚。どくどくと恐怖に脅えていると、校長から戻るように指示される。
これが、四大精霊との契約。まるで首輪がつけられたような絶望を感じた。ああ、だから先生たちはあんなにも生徒を脅すのかと、納得する。
――もう、後戻りはできない。
アンダインとの契約者たちの中に入る。夏休みを挟めば、他の属性の魔法に触れることはない。
コルネリアは、ついに、二年生へと進級する。
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2019/02/09
2019.2.9
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