雪もちらつく染み入るような冬の朝、タンスを漁っては分厚い服を探す。雪さえなければ薄着を重ねても耐えられたが、こうも冷えるとそうはいかない。なにかないかな、とタンスの底までひっくり返していると、一つだけそれを見つけた。
「……うわ、なつかし」
タンスの底に眠っていた、不恰好なセーター。使用された形式はなく毛玉も見えないほど綺麗だが、それ以上に不揃いの網目などでセーターと言うのも憚られるものだった。
昔々、編み物にハマっていた時代に作ったもの。下手くそで見られたものではないが、一応形にできるくらいには成長していた証だった。今ではすっかりやり方も忘れて、不恰好でもセーターを作ることは出来ないだろう。
「えー、これしかないの。もうちょっと服買おうかなあ」
手編みセーター以外の分厚い服は、ないのか洗濯中なのか見当たらない。いくらか悩んで、仕方なくセーターを頭から被る。形は悪いがサイズは合っていた。
どうせ今日は休み。家から出ないのであればどんな格好をしていても問題はないだろう。
「ま、せっかく作ったんだから多少は着ないとね」
外ではまだまだ雪が降り続いている。ようやく着てもらえたセーターが降らせているみたいだった。
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2019/02/10
2019.2.10
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