2019/01/27

2019.1.26

 柔らかな長い髪を垂らし、大きく丸い目を伏せて、少女は朝食のパンを咀嚼する。その様子はなにかひとつの絵画のようであったが、しかしあまりにも美しい少女が一般市民と同様の食事をしているのは不自然にも映る。
 整った弾力のある唇についたパン粉を舐めとって、少女は手を拭いた。出る準備をするまではまだ時間があるからか、紅茶を飲みながらぼんやりとテレビを見始める。天使か妖精のように可愛らしい少女の視線の先では、最新のニュースが流れていた。
「……あ、地元だ」
 画面に映されたテロップには、少女の居住区域の名前が記されている。殺人事件だそうだ。5人も殺したその凶悪な犯人の男は、『天使を守りたかった』などと供述し精神鑑定を受けているらしい。
 少女はそんな怖いことがあったのかと思いながら、そういえば殺人事件で最近慌ただしかったことを思い出す。ただでさえ来る回数の多い警察官が、さらによく顔を出していた気がする。少女も気をつけるように口を酸っぱくして言われていたが、すっかり忘れていた。
 ――そういえば、最近ストーカーが減ったわ。
 天使か妖精のように可愛らしい、あまりにも美しい少女は日常的にストーカー被害に遭っていた。視線を感じない道はないし、差出人不明の手紙が届かない日はなかった。しかし、ここ最近は日増しに減っていた気がする。
 ――まあ、おまわりさんが頑張ってくれてるのね。
 ここ最近、ずっと殺人事件などで奔走していた警察官がついでに取り締まってくれたのだろう。納得した少女は学校へ行く支度を始めた。

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