ふと、頭痛を感じて目を覚ます。目の前に広がるキーボードに、仕事中だったことを思い出した。今は何時だろう、今日中に仕事を終わらせたいけれど。寝ぼけた頭でマウスを操作すると、そこまで時間は経っていないことがわかった。自宅で仕事できるのはいいが、こうやってサボりがちになるのは本当によくない。
さあ、続きをしようと伸びをしたところで――違和感に気付く。
頭上で高く結ばれたツインテールと、いつの間にか背後にいた夫。そのふたつを結びつけるのは難しくなかった。
「ちょっと、なにしてるの」
「え~……」
いたずらがバレた夫は曖昧に笑う。手には櫛を持っていて、ツインテールを結んだのは彼なのがわかる。
「もー、なにこれ」
「ツインテールの日なんだって」
「こんなのしていい年じゃないって」
「せっかく結んだのに……似合ってたよ?」
もう三十路も近いのに。恥ずかしくてすぐに髪をほどくと夫は残念そうに髪を弄ぶ。
夫は私の髪を弄るのが好きだ。上手くはない、ただ色んな髪型を作りたがる。その度に似合ってるとは言うけれど、正直恥ずかしいのでやめてほしかった。
「似合っててもやだよ、恥ずかしい」
「僕しか見ないんだからいいじゃん」
「あなたに見せるならなおさら嫌」
「なんで~」
夫は私の色んな髪型を見たがる。普段私が試すようなことをしないから、なおさらやりたいらしい。
でも、自分で自信を持って見せられる私だけ見て欲しいので、どんなに望まれてもやっぱり嫌だった。
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2019/02/02
2019.2.2
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