駅前の喫茶店に入って、順に注文をしていく。その中で棚に置かれている小さなチョコレートを見て、バレンタインだったのを思い出すと、わたしは佐藤くんに問いかけていた。
「あの、チョコ好き?」
「え、うん」
「じゃあ、これひとつください」
一口で食べれるような、安いチョコレート。それを紅茶と一緒に受け取り、席に着くなり佐藤くんに渡す。
「あの、バレンタインだから。今日付き合ってくれたお礼」
「ありがとう……。それで、えーと、どうしたの?」
二人、困惑したまま向かい合って黙る。ろくに話したことがない、ただのクラスメイト。それがどうしてこんなところに来ているんだろうと、再三冷静になってしまう。大体、学校のすぐ近くで誰に見られるかもわからないのに。
ぐるぐるしはじめると気持ち悪くなってくる。けど、ここまで来たら腹を括らなければいけない。
「あの、お礼が、言いたかったの」
なんとか言葉を紡ぎ出せば、続けるのは簡単だった。
「他に万年筆使う人なんて知らないから、わたし、どうやって使ったらいいかもわからなくて……あの時、話しかけてくれてありがとうって」
「うん……」
「それからね、佐藤くんにもう少し、万年筆の話が聞きたかったの。……迷惑だった?」
伝えたかったことはこれで全部。どう返されるか不安で仕方がない。彼はわたしが全部言い切ったところで、ほっとしたように笑った。
「なんだ、そんなことか。いいよ別に」
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2019/02/14
2019.2.14
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