「佐藤くんはどうして万年筆を? 珍しいよね」
許可を得たところで、佐藤くんに質問をする。普段から万年筆を使いなれている様子は高校生にはあまりそぐわない。文房具が好きという風でもない。わたしのように誰かに贈られたならともかく、高校生で万年筆を持つのは珍しいと感じていた。
佐藤くんは少し困ったようにしてから、まあそうくるよな、と口を切る。
「あの……中学生の時に怪我してさ。そのせいで利き腕の握力全然ないんだ」
「えっ?」
「普通の文房具、案外力いるだろ。使えないんだよ、俺」
想像していなかった理由に、思わずごめんと謝る。佐藤くんはいいんだと笑って、確かめてみるかと手を出したけれど、それは恥ずかしくて断った。
言われてみれば、今もカップを持つのは左手だ。観察していた間も左手ばかり使っていた気がする。左利きなのだと思っていたが、使えなかったからなのだとわかる。
「それからは左手で色々やってるんだけど、文字だけは書けなくてさ」
「それで、万年筆なんだ。力がいらないから……」
「病院の先生が勧めてくれたんだ、安いのもあるからって」
リュックを漁り、筆箱を取り出すと彼は中身を見せてくれる。色違いの万年筆が三本と修正テープ、それから定規が入っているだけで、消しゴムはなかった。
「今は万年筆ごとに違う色入れて使ってる。高いけど、まぁ楽しいよ」
そう話してくれる佐藤くんに、悲しみはない。だけどそんな話を、親しくもないわたしにさせてしまったのがとても後ろめたかった。
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2019/02/15
2018.2.15
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