2019/02/13

2019.2.12

「大丈夫? 本当に大丈夫?」
「だいじょーぶ! お母さんはそこで見てて」
 台所で踏み台に乗り、娘は張り切ってキッチンに立つ。机の上にはじゃがいも、にんじん、たまねぎ、そして豚肉。それらを危なっかしい手つきで切り始めるのを、ハラハラしながら見つめていた。
 学校でカレーの作り方を勉強したからと、意気揚々に晩御飯を作ると宣言した時は成長を感じもした。しかしいざ、一人でキッチンに立たれると手を切らないか、火傷をしないか、踏み台から落ちないかとそんなことばかりが気になってしまう。大分大きくなったとはいえ、まだ十歳でしかないのだと打ちのめされる。
 だが娘はお母さんは見ててとばかり主張して、自分の成長を見せつけたくて仕方がないようだった。
「材料切ったら鍋に入れてー、火をつけてー」
「そんな近くに手を置かないの、火傷するわよ!」
「もーわかってるって」
 母親の心配もどこ吹く風で、野菜を煮込み始める。十分に煮込んだあと、レトルトのルーを入れれば完成だ。
 完成が見えてきたところで、ようやく無事に済みそうだと胸を撫で下ろした。鼻腔をくすぐるスパイシーだが甘口な匂いに、疲れもあって空腹を刺激される。
 事前に炊いておいた米を器に乗せて、ルーをかければ完成。どこから見ても、完璧なカレーだった。
「はい、お母さん! ね、ちゃんとできたでしょ!」
「はい、よくできました。もう一人でこんなに出来るのね」
「そうだよ、もう五年生だもん!」
 自慢気に胸を張る娘に、子供として扱うべきか、大人になろうとしていると受け入れるべきか悩んだことは、当面の間は内緒だ。

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