2019/02/11

2019.2.11

 机に一枚、小さな便箋。一時間悩んで選んだ、かわいすぎないくらいのシンプルな用紙。それにHBのシャープペンシルで薄く文字を書こうとする。
 書き出しはどうしよう。香川くん? 佑樹くん? それとも香川様? 拝啓から書いた方がいいんだろうか。なんて、一行目から躓いて文章が決まらない。そんなに畏まる必要もないけれど、教養のない女だと思われるのは絶対に嫌で。
 手紙の書き方を検索しながら、なんて書こうかと頭を回す。そうこうするうちに疲れてきて、動画を見始めたりしてあっという間に一時間が経ってしまう。はっとやるべきことを思い出して、白紙の便箋に向き合うと、やっぱり文章が思い付かなくて頬杖をつく。
 ――いいんだけどね、どうせ出さないんだし。
 書こうとしていたのは、所謂恋文。本人に渡すつもりはないけれど、いい加減誰にも言わないでいるのは耐えきれなくて、せめて少しでも吐き出そうとして思い立ったものだった。
 だから本当は気負う必要なんかないんだけど――それでも、好きな人への手紙に手抜きなんて出来なくて。
「はぁ、好きだって言えちゃえば楽になるのかなぁ」
 今はとにかくこの苦しい気持ちから解放されたい。好きなままで、でもバレないで、落ち着いた気持ちに戻りたい。こんなに苦しいといつか胸が潰れてしまいそう。
 両想いなんていらないから、どうか今すぐ楽にさせてほしい! そんな気持ちを、手紙さえも受け止めてはくれないみたいだった。

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