2019/01/31

2019.1.31 星心

「ファンのみんなからラブレター!?」
「そう! それで、抽選で撮り下ろしサイン入りブロマイドをプレゼントするんだよ!」
 アイチュウたちを集めて朝比奈柚希が発言したのは、次のバレンタインイベントのことだった。バレンタインには毎年多くのチョコレートが贈られてくる。それを手紙に置き換えイベント化してしまおうということだった。
「手紙を送るって言うのはすごく勇気がいることだけど、イベント化して、さらにお礼が返ってくるかもとなると、普段送らない人も送ってくれるかもしれないでしょ?」
「確かに……。普段ファンレターに手紙は返せないから、いいかもしれないね」
「どうせなら全員にお返ししたいけど……悪くないわ」
 アイチュウたちは口々にイベントへの感想を述べる。そのどれもが好意的だ。ファンレター、それはアイチュウたちの活動の糧。それをおおっぴらに募集してしまうのは、けして悪くない案だった。きっかけが掴めないとなかなか書けないファンレターのよい契機になってほしいと企画したものだった。
「そっか……じゃあ俺も書く!」
「いいんじゃない。愛童くんは誰に書くの?」
「そうだな……心だな!」
「ハァ!?」
 そんな中、唐突にそんなことを言い出したのが愛童星夜だった。自分も書くと言い出すのまでは予想していたが、そこで自分の名前が出てくることを想定していなかった華房心は飛び上がる。
「な、な、なんで私なのよ! 椿に出しなさいよ!」
「椿さんには何回も出してるからな! それにラブレターなんだろ? 心に出した方がしっくり来る」
 うん、と一人納得する星夜のことを、心以外の誰も気に止めない。あっさりと解散する周囲に取り残されながら、心はかろうじて叫んだ。
「お、送ってきても返事なんか送らないんだから!」
「おう、そしたら返事は聞きに行くぜ!」
「そうじゃなーい!!」

0 件のコメント:

コメントを投稿