2019/01/24

2019.1.24

「先生は、どうして退魔師になったんですか?」
 コルネリアがその大きな目でアイザックを見上げる。退魔師を目指す彼女は、思い付いたようにそんな疑問をぶつけてきた。それまで話していた歴史の話からは大きく逸れてしまっていたが、アイザックは気にせずに答えた。
「コルネリアさんと同じだよ。代々そういう家系でね」
「そうなんですね! でも先生の目は、わたしとは違う色ですね」
「そうだね。僕の家が退魔師の家系になった由来は、炎からなんだ」
 以前教えてもらったコルネリアの家の話と同じように、アイザックもまた語る。実家に帰る度に言い聞かされるそれは、けして忘れられるものではなかった。
「僕の家は、四大精霊のサラマンドラから、初めて浄化の炎を授かった者の子孫だと言われているんだ」
 きっと、誰かがでっち上げたものだと思うけれどね。そうアイザックは付け加えて、歴史を語る。
 魔法の始まりは、四大精霊と契約し、魔法を授かり持ち帰った者からだという。
 アイザックの先祖は、それと同様にサラマンドラと契約し浄化の炎を授かったのだと伝えられている。それが本当か確かめたくて、歴史に興味を持ったから今のアイザックがいた。しかし長く調べてきたが、そんな記録はどこにもないので作り話だろうと判断している。とはいえ、そんな経緯でアイザックは退魔師を継いだのだった。
「すごい! じゃあ、それはアイザック先生を作ったお話なんですね」
 アイザックの昔話を聞き終わって、コルネリアはそう笑った。真に受けて態度を変えるでもなく、しょうもない作り話を笑うでもなく。ただ、アイザックを作った話として受け入れて笑う。
 いつもまっすぐ恋情を伝えてくる彼女の、時折見せる太陽のような温かさが何故だかアイザックを癒すのだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿