夜、コルネリアは机に向かう。ルームメイトを起こさないように、小さな明かりだけを頼りに筆ペンを用意する。広げているのは簡素な便箋。今日はどんなことを書こうかなと胸を踊らせる。
コルネリアは時々――いや、もう少し頻繁に、アイザック先生へと手紙を書いていた。入学式で一目惚れをしてから、飽きることなくこの習慣は続いている。
アイザックの好きなところを挙げて、好きになったところを挙げて、授業で好きになったことを挙げて、これから好きになれそうなところを挙げていく。そうしているとあっという間に便箋は埋まってしまうから、書くことに困ったことはない。
それほど書き続けているけれど、手紙の返事が来たことはない。でも時々、手紙に書いたちょっとした悩みや勉強については会ったときに答えてくれることがある。その度にちゃんと読んでくれてることがわかって、好きだと思っては嬉しくなるのだ。アイザックは子供のコルネリアをけして相手にはしないが、無下にもしない優しい人だった。
アイザックのそんな、コルネリアを生徒として丁重に扱ってくれるところが好きだ。幼いコルネリアには、まだ恋愛というものが理解できない。アイザックが好き。ただそんな一方的な気持ちしかないコルネリアは、アイザックになにか求めているわけではなかった。だからアイザックの立場を守ったドライさは心地よいものがあった。
「アイザック先生、好きです。わたしに好きでいさせてくれる、そんなところが好きです」
今日はそんな書き出しから始まった。届くことを考えない、ただの純粋な恋心だった。
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2019/01/23
2019.1.23
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