翌朝。ご飯を食べに起きるとおじいちゃんはいない。そう言えば、おじいちゃんはいつも朝は留守だった。こんな早くにどこに行ったんだろうな、ともそもそ朝ご飯を食べる。おばあちゃんのご飯はお母さんの味とは少し違うけど似てる。
「あ、万由梨ちゃん、おはよう」
「おはようございます」
もうすぐ食べ終わりそう、と言ったときにおばあちゃんが台所から顔を出す。なんだかいたずらっ子のような顔をすると、おばあちゃんはにっこりわたしに教えてくれる。
「万由梨ちゃん、朝ご飯食べ終わったら、おじいちゃんの仕事場行ってきなさい」
「え?」
「おじいちゃん、今お仕事してるから」
ああ、とようやくそこでわかった。いつも朝だけいないのは、この時間に仕事をしていたからなのか。薄情なわたしはそんなことも気にしたことがなかった。
おばあちゃんの勧めに、急いで食べ終わろうとするとお父さんは驚いて引き留めてくる。
「おばあちゃん、そんなこと教えるなよ。仕事場入ったらめちゃくちゃ怒られるだろ」
「そりゃあんたがいつも悪さするからだよ。万由梨ちゃんなら大丈夫」
そんな会話をBGMに大急ぎで最後の一口を飲み込んで、よし、とわたしは立ち上がる。
もう逃げない。逃げられない。万年筆を取りに行って、早くおじいちゃんのところに行かないと。
「ごちそうさま! おばあちゃん、ありがとう!」
「はい、いってらっしゃーい」
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2019/04/09
2019.4.9
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