男性向けのアクセサリー陳列棚を眺めて、華房心は唸る。
明日は愛童星夜の誕生日だった。たまにはなにか買ってあげてもいいだろうと思いつつ、クリスマスにそんなことをするのはなんだか気恥ずかしくて悩んでいたのだった。
――星夜になにか買うのなんてしないから、なに買っていいかわからないわ。
星夜を買い物に付き合わせることはしても、彼の買い物に付き合ったことはない。そのせいで好みも判断がつかなかった。なんでも素直に喜びそうなのがなおさら困りものだった。
「ふぅ。男性物なんてあまり見ないし、どう選んだらいいかわからないわ。……あら」
そろそろ違う店を探そうか、と顔を移した先で別のアクセサリーを見つける。近付いてみると、ペア用のアクセサリー棚のようだった。
その中で特に目をひいたのが、男女ペア用のシルバーネックレス。リングが二つ組合わさった、品のいいものだ。女用のものはリングがハートになっていて、心の好みにぴったりだった。
「いいな……いやいや、なんであいつとペアネックレスなんか……!」
ぶんぶんとかぶりを振って、考えを振り切る。しかし一度惚れてしまったネックレスに、目が離れてくれない。
――別にこのペアネックレスに深い意味なんてないわ。
――ただ私が欲しいだけ。そうよ、星夜にあげるのはついでよ!
「すみません、これください!」
結局、あれこれと理由をつけて購入を決める。渡せなかったら二つとも使えばいいのだ。そう自分を誤魔化して。
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