「お母さんにそっくりね」
あたしはそう言われることが多かった。似てるとは思うけど、言うほど似ているかとも思う。しかし他の人には、あたしは母の生き写しに見えるらしい。あたしの写真を見て、母の若い頃かと問われたこともあるそうだ。
それほど似ているらしい母が、もしもあたしと同い年だったら。ふとそんな妄想をしてみる。
もしもあたしと同い年だったら、双子のように見えるのだろうか。
あたしと母は性格も似ている。親子だから当然かもしれないけど。だから同い年だったら双子と言われることもあったかもしれない。母がもし、あたしと双子だったらどんな風になるだろう。あたしが二人いるような感覚なのか、それとも。
考えても違和感ばかりが募る。あたしがもう一人増えるのだとしたら嫌だし、子供な母というのも考えにくかった。どんなに似ていると言われても、あたしと母は別人なのだ。
――もう一人自分がいるって、どんな感じだろ。
そっくりな双子は、互いをどう思うんだろう。連鎖的に続いた思考を、ようやくやってきた電車の風が断ち切った。
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2019/02/05
2019.2.5
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