佐藤くんに話しかけようと、機を伺うことさらに数日。
友達とずっと一緒にいる彼に話しかける隙は見つからない。こっそり呼び出すのは色々誤解を生みそうだし、なかなか上手く出来ないでいた。
普通に話しかけたら、と思わないでもないけど今まで話したことがないのに不自然すぎる。なにより人前で万年筆の話をするのはちょっと。
佐藤くんの動向を伺うばかりで、なかなか行動に移せない。わたしの悪いところだった。
「……あのさあ」
「ん、なに?」
「あんた佐藤くん好きなの?」
「はぁ!?」
「だってここんとこずっと見てない?」
体育の授業中、男子がグランドを走っているのを眺めていると友達は脈絡なくそんなことを聞いてくる。
聞くのはいいけどせめて男子の見えないところでやってほしい、心臓に悪いし変な誤解されたらどうしてくれるのか。
「そんなんじゃないよ。ただちょっと話したいことがあるだけ」
「でもここ一週間くらいずっと見てない?」
「タイミングを図ってるの」
「告白でもするみたいよ、あんた」
自分でも挙動不審なことはわかっているけど、そんなんじゃない。ふてくされるわたしを友達は面白がって見てくるのもまた鬱陶しい。
万年筆をもっとちゃんと好きになるために、もう少しだけ佐藤くんと話してみたいだけなのだ。もっと彼みたいに堂々と万年筆を使えるくらいになりたいだけ。
「……友達になりたいだけだもん」
それを友達になりたいと形容するのは合ってなかったけれど、今はそう言うしかなかった。
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2019/01/20
2019.1.20
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