オーキド博士が好きだった。
恋などとは呼べない。ただあの人は、アタシの世界に初めて入ってきた人だった。シルバーと二人で必死に生きてきたアタシを叱って、正しい道に戻そうとしてくれた初めての人だった。あれから色々なことがあった。だけどオーキド博士と出会わなければ、アタシは今でも真っ当な生活を送れていなかっただろう。シルバーと二人で、世界中を敵に回して、無意味に、必死に、生きていたんだろう。
アタシはオーキド博士に褒められたかったのだ。その大きな手で頭を撫でてもらって、もう大丈夫だと言ってもらいたかった。ナナシマで今でも「一番ずる賢い」と評された時は少しだけショックだった。いい子になったと言われたかった。でもなにかにつけて、心の中でごめんなさいを言ってずるをしてきたアタシは、やっぱり「一番ずる賢い」のだろう。
両親と再会してしばらくが経って、アタシはようやくこの初恋染みた感情の正体がわかった。
アタシはオーキド博士に、父親になってほしかったのだ。アタシの保護者となってほしかった。誰かに守ってほしかった。でもあの人は、アタシを叱ってはくれても、守ってくれたことはなかった。結局は幼子の浅ましい期待だったのだ。
それがわかったから、アタシはこの感情を恋とは呼ばない。誰に言うことも、この先ないだろう。
オーキド博士、だからお願いがあるの。
アタシがこの先、自分で幸せにしたい人に、幸せにしてもらえる時が来たら。
あなたに一番に祝ってもらいたい。それだけが、今あなたに願う唯一のわがままだ。
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2018/12/01
2018.11.13 ブルー→オーキド
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