小学校から帰るとすぐ、部屋のテレビをつけてレトロゲームを開始する。少し前までなら当たり前の行為。しかし、最近では久しぶりにすることだった。
――今日は#コンパスがメンテナンス中だからな。
ある日突然、ヒーローと呼ばれるプレイヤーに選ばれたアタリは、それからと言うものレトロゲームをするより#コンパスで遊んでいることの方が多かった。3Dゲームは得意ではないのに、どうしてか。
――早く、メンテナンス終わんないかな。
レトロゲームをやりながら、そんなことばかり考えてしまう。それくらい、最近では#コンパスにいることが当たり前になっていた。当たり前に、あの機械の少女が隣にいたはずで。
初めて#コンパスに行った日も、こうしてレトロゲームをしていた。突然テレビが光り出して、アタリを中へと引きずり込んだのが全ての始まりだったのだ。
そう、たとえばこんな風に。
「#コンパスノ メンテナンスガ シュウリョウ シマシタ」
「――えっ」
独特のカタコトで喋る機械の少女が画面に現れたかと思うと、一瞬にして世界が光に包まれる。
次に目を開いたときには、見慣れたデジタル風景。目の前には、真っ白な体躯の機械少女が立っていた。
「アタリ。メンテナンスノ サイシュウ カクニンニ ツキアッテ モラエマスカ?」
少女――Voidollの言葉と共に、広がるトレーニングステージ。デッキ構築画面を開いて内容を確認すれば、アタリはすっくと立ち上がった。
「いいぜ、負けないからな!」
「サイコウケッサク デアル ワタシガ マケル ハズハ アリマセン」
――バトルのはじまりです。
ナレーションと共に、二人は動き出す。この時を待っていたのだと、アタリは胸を踊らせた。
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2018/12/01
2018.11.12 アタボイ
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