「星夜!」
帰り際、少女の声に呼ばれて足を止める。振り返れば、少女にしか見えない――実際には少年の――華房心がいた。彼女は周囲を注意深く見回したあと、星夜の元へと駆け寄ってくる。
「おう、どうした?」
「今日誕生日でしょ。これ、プレゼント」
そっけなく渡されたのは小さな小包。開けていいか確認して、丁寧に包装を解くと中には品のいいネックレスが収まっていた。
リングが二つ組合わさった、シルバーネックレス。ぱっと喜んだ後、すぐに既視感に襲われる。これを今日、どこかで見たような。
星夜の反応を待つ心を見下ろして考える。そうだ、確かこれは。
「もしかして、これって心とお揃いか!? 嬉しいぜ!」
昼間に心がつけていたネックレスにそっくりなのだ。彼女のものはハート型だったが、リングが二つという印象的な形だったからよく覚えていた。
「ち、違うわ! 違わないけど、違うわよ!」
「どういうことだ?」
「わ、私がペアネックレスの片方が欲しかっただけ! あなたにあげたのはついでよ!」
わたわたと否定する心に星夜は首を捻る。心が片方欲しかっただけとはいえ、そのもう一方を渡す相手に選んでくれたことが嬉しい。なにより、どちらにせよお揃いなことには変わらなかった。
「そんなのどうでもいい! 心、ありがとな!」
「きゃっ。……今日だけよ。おめでとう」
ぎゅうとハグをすると、今日は逃げないでいてくれた。星夜にはそれだけでも十分なプレゼントだった。
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