2018/12/01

2018.11.10

 アイザックは学校を卒業したあと、家を継いで退魔師になった。暇になったときは趣味で魔法史の研究をしていたら、母校から声がかかり非常勤で講師をすることになった。
 子供は嫌いではない。無邪気に、時に生意気に、接してくれる子供たちとの交流は楽しかった。やがて研究目当てに始めた講師の方に身が入り、気付けば退魔師の仕事が副業となっていた。
 どんな風に教えたら、もっと魔法史に興味を持ってもらえるだろう。日々そう考え研究をしていたある日、一人の少女がアイザックの前に現れる。
「あ、アイザック先生!」
「おや、コルネリアさん。こんにちは」
 太陽色の癖毛に、世界に恋をしているように輝く瞳の少女。先日入学してきたばかりの新入生だった。
 名前を呼ばれた彼女は飛び跳ねて、あわあわと言葉を詰まらせたあと、これ! と手紙を押し付けて走り去ってしまう。
 手紙を開けば、一言「好きです」と拙い文字で書かれていた。
 微笑ましいとアイザックは笑って仕舞う。
 この手紙がまさか十年以上、結婚したあとまで送られ続けるとは、このときはまだ考えてもいなかった。

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