わたしは祖父母のことを何も知らない。
気さくなおばあちゃんと、寡黙なおじいちゃん。野菜を作っているから定期的に送ってくれるけど、農家だという話は聞かない。ただ家庭菜園が大きいだけだと、父は言っていた。
祖父母について知っていることはそれだけだ。それ以上を知る必要もなければ、興味もなかったから。わたしはとても薄情な孫で、たまにしか来ないこの家は宿程度にしか認識してこなかったのだ。
そんな弊害が、今、出ていた。
寛ぐお父さんと、おばあちゃんの手伝いをするお母さん。
「…………」
両親を頼れそうにもなくて、居心地の悪さを感じながらテレビを見ることしかできない。万年筆ありがとうと言うだけなのに。
おじいちゃんは依然新聞を読んでいる。難しい顔で、ルーペを動かしながら。そんな状況で話しかけるなんてできなくて。
ふぅ、とため息を着く。本当にいつもわたしは意気地がない。ただ一言伝えるだけなのに。
――そういえば、おじいちゃんは万年筆を持っているのかな?
もだもだしていると、ふと浮かんだ疑問。とはいえ、すぐに聞くこともできなくて。
――後でおばあちゃんに聞いてみようかなあ。
万年筆で書いたSSを纏めています。 Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. (当サイトのテキスト・画像の無断転載・複製を固く禁じます。)
2019/04/03
2019.4.3
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿