緋袴を穿き、帯を締める。さらに美しい千早を被れば、すっと意識が清められ、私は巫女として変貌する。
新年を迎えて、約半月から一ヶ月が私の繁忙期だ。この時期は新年の祈祷に殺到する人々の祈りを捧げるため、私は日夜神へ神楽舞を捧げることになる。この時期、たまに何かが――神が本当に降りられたんじゃないかと感じることがある。そのくらい、新年の私は神にほど近い場所に行く。正月は本当に忙しい。それでも嫌ではないのは、そうやって神の御許へ近付くことができる気がするからだ。
この役目を担うことができて本当によかったと思う。若い娘の時分でなければ、神楽舞を捧げるという形での奉仕は難しい。神に仕えることはこれ以外でもできるけれど――巫女として神楽舞を捧げている時が、一番神に近い感覚がするのだ。
神聖で、透明で、世の真の姿を神の眼を借りて見ることができる、一瞬。あまり他の巫女には理解されたことがないが、神主様にはわかってもらえた、この感覚。神の御許に傅いているその一瞬こそ、私が神職に就いている理由だ。
きっと神様も私と同じように、今頃そんな多くの人々の願いを聞くためにてんやわんやしているのだろう。そう思えば、神との共同作業に胸も踊る。
だから私は今日も舞う。神が願いを聞き取りやすいように、神楽に乗せて届けるのだ。それが、巫女である私の役目である。
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2019/01/06
2019.1.6
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