2019/01/13

2019.1.13

 橘透也とは大半の授業が被っているから、一日のほとんどを一緒にいる。とはいえ違う授業を取っている時間もあるからずっとべったりというわけではない。だから、何時間か置いてから会うこともあるわけで。
 そうして数時間振りに会った彼の変化に気付くのは難しくなかった。
「……煙草吸ったろ、お前」
「あれ、わかった?」
 煙草特有の甘い香りが、普段の透也の匂いを殺している。その女性と見紛う美貌と煙草の匂いは酷く不釣り合いで、合流してすぐに気付いた。
 けして、俺は嫌煙家ではない。吸う機会があればいつか吸うこともあるだろう。しかし。
「お前未成年だろーが! なんで吸ってんだ!」
「あれ、お前そういうとこ真面目なタイプ?」
「未成年が酒と煙草買うことでどれだけ店員が迷惑被るかわかってんのか! あ゛!?」
 居酒屋でバイトしている身としてはそこを見逃すわけにはいかなかった。こういうやつのせいでこっちがとやかく言われるのだ。
 怒鳴る俺に透也はいくらか申し訳なさそうにして、弁明を始める。
「先輩に連れ込まれて断れなかったんだよ……」
 曰く、高校時代に受験でお世話になった人らしい。たまたま喫煙所近くで出会ってそのまま、ということらしかった。その危機管理のなさや、煙草を強要する人間と知り合いなことは心配になったが、自分から吸ったわけではなさそうで安心する。
「そうか。……うまかった?」
「体が悪くなる味がする。まだ残ってるぞ」
 舐めてみるか、と顔を寄せてくるのにぎょっとして体を引けばケラケラ笑って教室に入っていった。もしも俺がそれに乗ったら、あいつは煙草の時のように流されてしまうんだろうか。

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