2018/12/09

2018.12.9

 過剰なくらい茹でたじゃがいもを力いっぱい潰す。ほろほろと崩れていく様は、一生懸命固く作った泥団子を一瞬で壊してしまったときによく似ている。
 やっぱりじゃがいもを切ってから茹でたらよかった、なんて後悔しながら体重をかける。でも一回やってみたかった。丸々としたじゃがいもを丸ごと潰すの。
 今日は仕事が休みで、ついでに用事もなくて、とてつもなく暇だった。だから夕方とさえ言っていいような浅い時間から、コロッケを作ってみる。君が食べたいと言っていたのを思い出して、暇潰しに。コロッケを作るのは初めてだ。料理をするのさえ珍しいけれど。
 なんとか崩れたじゃがいもと玉ねぎ、ひき肉を混ぜ合わせて形を作っていく。ふと時計を見たら大分時間が経っていた。でも君が帰ってくる時間はまだまだ遠い。卵とパン粉を付けて、じゃがいもとひき肉をグロテスクに混ぜ合わせたものをフライパンで揚げていく。
 きっと帰ってきた君は、わたしが一生懸命作ったコロッケに目もくれずお風呂に入るだろう。そしてくたくたになった顔でコロッケを貪って落ち着くのだ。コロッケが手作りかどうかなんて君にはどうでもいいことだし、ましてや手作りの大変さなどきっと君はわからないのだ。
 だからわたしはこのコロッケを暇潰しの道具以外にはしない。美味しくできたかなんて二の次で、わたしがもて余した時間と体力で作った粘土遊びの結果でしかないのだ。
 なので君には、なんにも知らないまま美味しいと笑って食べる権利をあげよう。早く帰っておいで。

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