染み入るような寒さに、街灯より町を照らすイルミネーション。駅前のカップルたちとすれ違いながら、まっすぐ帰路を歩く。けして嫉妬などはしないけれど、この時期人混みを歩くとなんとなく惨めな気持ちになるから不思議だ。
しかし駅から十分ちょっと歩けば、人気のない住宅街に景色は変わる。その中で一際輝く建物に向かって歩く。まだまだ客のいるスーパー。夕飯を買うべく一歩踏み出せば目に入ってくるものに呆れる。
――季節感があるんだかないんだか。
入り口に積まれた鏡餅の山。クリスマス当日でありながらもう正月のものが売られている。その隣ではサンタクロースの格好をした店員がケーキを売っているのだから、ますます季節のちゃんぽんのようだった。
風情があるのかないのか判断しにくいその光景は、ある意味日本らしいと言える。季節ものが好きな私たちは、いつも呆れながらこの季節の境界を楽しんでいた。
「クリスマスまで来ると年の瀬まであっという間だなぁ」
買う予定のなかった鏡餅を手にとって、カゴに入れる。そういえばまだ年賀状も書いてないことを思い出す。
こうやって世間が賑わってくれないとイベントさえ思い出せないような大人になってしまった。だけど、ふとした時に季節を感じられることは嫌いではなかった。
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2018/12/25
2018.12.25
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