2018/12/01

2018.11.24

「頭痛い……」
「弱い癖に飲みすぎるからでしょ。はい水」
「ジュース飲みたい」
「酔っぱらいには水でいいの」
 大衆居酒屋で二人、喧騒に紛れて酔いつぶれている。彼女は文句を言いつつ大人しく水を飲み干すと、また懲りずに酒を飲み始めた。私は呆れながら、彼女が吐きそうにならない限りは放っておく。
 彼女は酒に弱い。べろべろになるのではなくて、頭が痛くなるタイプの酒を飲んではいけない人間だ。彼女もそれを知っているから、普段は絶対に飲まない。頭が痛いのは嫌いだからだ。
 だけど、ごく稀に。酒が飲みたいと言う時がある。翌日が暇で、体調も悪くなくて、特別疲労も溜まってなく、信頼できる人間がいる時だけ。酒が弱いと言っても、嫌いというわけじゃない。だから、度数の限りなく低いジュースのようなサワーを、ゆっくりと飲んでいる。
 彼女の酒に付き合う度に、私は馬鹿だな、と感想を抱く。これでもし、信頼できると思っていた人間に裏切られたらどうするんだろうって。無理な飲み方をしないと言っても、酒を飲んだ時の彼女は無防備そのものだ。私が今、彼女を口八丁に連れ出したりなんかしたら。
 ……なんてことを毎度考えながら、彼女の酒に付き合う私も馬鹿なのだ。
「なによ、ぼーっとして。あんたも酔ってんの?」
「私、ザルなの知ってるでしょ」
「んふふ、知ってる。だからあんたと飲むの好き」
 お酒強いっていいわね、と彼女は笑う。
 私の理性が酒に溶けないことを、もう少し感謝してほしいものだ。

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