2018/12/01

2018.11.23

 最近、つけられている気がする。
 なんだろう? 別に、今に始まったことでは本当はないのだ。ただ……今までよりも、近い。そう感じる。
 誰かがあたしを見張っている。そしてその距離は確実に、近付いていた。
 だけど確証があるかと言えば、ない。ただ実感としてあっても、現実の被害にまで繋がらない。それでも、一人でいても、誰かといても、全く変わらなかったその距離感が変わったことが不気味だった。
「幸穂、邪魔」
「うわ、なに。椅子空いてんじゃん」
「ソファがいいんだよ」
 そうやって一人悩んでいると、兄貴が狭い隣にわざわざ座りに来る。仕方ないから少しずれてやると、兄貴は横柄に幅を取った。ちょっとは遠慮してくれ。
「で、幸穂なに悩んでんの」
「は?」
「暗い顔してんじゃん」
「なに、気持ち悪い」
 あたしのことなんか気にしないで、自由にあけすけに生きてきた兄貴がいきなりこんなことを言ってくるとびっくりする。
 でも、そんなにわかりやすかっただろうか。ストーカーがいる気がする話なんだし、家族にちょっとは相談してもいいかもしれない。まぁ兄貴だから、なんの役にも立たないだろうけど。
 そう期待せずに、兄貴に最近ストーカーが近くなった話をする。兄貴は聞いてきたくせに心配する素振りも見せないで、「大変だなぁ」と一言感想を述べただけだった。
「聞いたんだからもうちょっとないの」
「じゃあ、一人で出歩かないように」
「俺が送り迎えしてあげるとか言えないの」
「俺も仕事あるし」
 そうだろうけど。本当にあたしの毒にも薬にもなってくれない兄貴だ。久しぶりに家に帰ってきたと思ったらこれなんだから。
「あっそ。兄貴に話したあたしが馬鹿だった。ばーか」
「はいはい」
 兄貴にこの話をした二週間後。まさか兄貴が結婚報告をしに来るだなんて微塵も予想はしていなかった。

0 件のコメント:

コメントを投稿