2019/02/28

2019.2.28

 かちり、とインターホンを押す。家の中でしか鳴らないタイプのそれは本当に鳴っているのか不安になるけど、ちゃんと中からバタバタと物音が聞こえるから大丈夫。
 あたしの一日はいつも、美幸を迎えに行くところからはじまる。
「佳奈子、おはよぉ~!」
「おはよ、美幸」
 のんびり屋で、間の抜けたこの幼馴染は放っておくとすぐ学校に遅刻するのだ。そんな彼女を見かねてこうやって朝迎えに行くのは、何年前から続いているだろうか。小学校に上がってすぐから、ずっと続いている習慣だった。
 美幸はあたしがいないと本当にだめだ。
「で、あんた鞄忘れてるよ?」
「え? ……あ! 本当だ! 待ってて~!」
 制服を着てすぐ慌てて出てきたんだろう、美幸はいつも背負っているリュックを持っていなかった。慌てて家に戻っていく姿を見て、あたしはため息をつく。
 どうせこの後、あれやこれやと忘れて戻ることになる。これを見越してかなり前に来ているけれど、それでも毎回ギリギリになってしまうんだから、美幸は本当に世話が焼ける。
 そんなダメダメなところを世話しちゃうのがよくないんだろうか。あたしと進路が分かれたらどうするんだろう。なんて思いながら、離れるビジョンも見えないほどあたしたちは一緒に居続けている。
「ごめんね、あのね、もういける!」
「本当に? ふふ、行くよ!」
 高校二年生になっても、あたしたちの生活は変わらない。変わるようにも思えない。きっとこのままずっと続くんだろうな、なんて。考えているのは美幸には内緒だ。

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