2019/04/04

2019.4.4

 おじいちゃんに話しかけることも出来ずに夕食を食べ終わった後、飲み物を取りに行くふりをして台所へ向かう。おじいちゃんはお風呂に行ったから、聞くなら今のうちだ。
「あの、……おばあちゃん」
「ん、どうしたの?」
「あの、聞きたいことが、あるんですけど」
 あまり話したことのない祖父母の中でも、おばあちゃんなら比較的話しやすいだろう。そう考えてのことだったが、いざとなると緊張して上手く言葉が出ない。
 佐藤くんの時もがんばったんだから、できる、はず。
「誕生日にもらった、万年筆のことで」
「あぁ、おじいちゃんが贈ってたやつね」
「おじいちゃんはどんなの使ってるのかなって」
 聞きたいんだけど、おじいちゃんには聞けなくて。そうもごもごと言うと、おばあちゃんは不思議がらずに聞いてくれる。
 にこにこと笑うおばあちゃんは、不意にこんなことを言ってきた。
「おじいちゃんのお仕事、なにか聞いてる?」
「え? いいえ……」
「あのね」
 今まで、特に気にしてこなかったおじいちゃんのお仕事。とうに定年の歳だからいつ来ても家にいることを不思議にも思ってこなかった。
 それが、こんな形で知らされるとは。
「おじいちゃんはね、万年筆を作る人なのよ」

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