土曜日、昼。わたしの緊張とは裏腹に綺麗な冬晴れの中で、佐藤くんを待っていた。待ち合わせは文具屋の最寄り駅。綺麗に区画整理がされた道には綺麗なビルが立ち並び、東京ほどではないが高級そうな雰囲気を醸している。それだけに、居心地が悪い。
寒いし、早く来ないかな。中で待ってようか。
「ごめん、待たせたか!」
「うわっ! あ、お、おはよう……」
逡巡したとき、突然肩を叩かれ跳ねる。佐藤くんの姿を認識すると、さらに緊張してきた。わたし、変な顔になってないかな。
ダウンジャケットを着た佐藤くんは、鞄も持たずにそこにいた。わたしと違って緊張した様子もなく、こっちと言って歩き出す。
佐藤くんはいつも、特に意識した様子もなくわたしに話しかけてくれる。意識されていないのか、慣れてるのか、どっちだろう。どちらにしても、フランクすぎて少し怖いのは、内緒だ。
佐藤くんについて歩くこと十分。レトロな雰囲気を残したお洒落な商店街にその店はあった。デザイナーズマンションみたいな洗練された内装は、綺麗だけれど拒絶を感じさせない。温かみのある板張りの内装は、高級感を残しつつやわらかい雰囲気があった。
そんな店の最上階。万年筆ばかりがある、拓けた空間が広がっていた。
「ここがいつも来てる場所。綺麗だろ、万年筆」
「うん…………」
太陽の光がたっぷり注がれる空間に、丁寧に並べられた万年筆。その色とりどりに輝く様子はまるで宝石のようだった。
万年筆で書いたSSを纏めています。 Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. (当サイトのテキスト・画像の無断転載・複製を固く禁じます。)
2019/03/04
2019.3.3
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿