佐藤くんと文具屋に行ってから数週間。テストだなんだと追われているうちに彼と話す機会もなく、あっという間に春休みがやってきた。
桜もポツポツと花開いてきた中で、そろそろ進学先も決めないとなぁ、と考える。なんとなく学科は浮かんでいるから、あとは大学見学だ。とはいえ、二年の夏にあれこれと行ったのでほとんど絞られてきているけれど。
もうすぐで高校三年生になる。そのうちにまた気付いたら大学生になっているんだろう。そんなぼんやりとした日常の中で、目立った変化は万年筆を手に入れたことばかり。
万年筆をもらったこと以外に、特に変化もない中で。母が何の気なしに言う。
「そうだ、春休みはおじいちゃんところ行くからね」
「…………はっ!?」
テレビを眺めながら睡魔と戦っていたところで落とされた爆弾。目が覚めて体を起こすと、母は変わらずポテチを食べていた。
「夏休みじゃないの!?」
「お父さんが休み取れるんだって。長く勤めてるから。ちょうどいいから帰ろうって。暇でしょ?」
部活もバイトもしていない、一人でぼんやりするばかりの娘の予定など聞くまでもないと。 わたしにだって友達と遊ぶという大事な用事があるわけだけど、残念ながら言われた日程は確かにフリーだった。
万年筆を貰ってから、初めて会いに行くおじいちゃんち。ああ、またそうやって万年筆はわたしに試練を訪れさせるのか。などと的外れなプレッシャーがわたしにのしかかった。
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2019/03/27
2019.3.27
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