本鈴が鳴り響き、出席を取るなり体育館へ移動する。聞く必要も感じない退屈な話を一通り聞くこと、何分ほどだろうか。体感二時間の始業式は、誰と話すこともできなくて退屈だ。
そんな苦行が終わってHRのために教室に戻ると、誰もいないはずの中に一人の人影。
「あ、おはよー」
「綾!」
先生の叱責も無視して気楽に手を振る、香川綾。きっちりとしたメイクにパーマをかけて軽く脱色してある髪。短いスカートを気にもせず足を組んでいる彼女にあたしは駆け寄った。
「ずるい! 始業式サボって!!」
「うはは、いいっしょ」
寝坊をしても、メイクもお洒落も忘れない。というかそちらをメインに考えてる綾はいつも少しだけ羨ましい。別に、あたしも手を抜いてるわけじゃないけど。
お洒落仲間の綾は、学校の規則も気にしないで自分の好きなように生きている。それをどうかと思うときもあれば、羨ましいときもあった。
「佳奈子もサボればいいじゃん」
「こら香川、優木を巻き込むんじゃない。優木も席に戻って!」
「はぁい」
HRの始まりに、言われるまま席へ戻る。その時目があった美幸が、どこか不安そうな目であたしを見ていた。
"サボるなんてしないよね?"とでも言いたげな顔に少し笑う。あたしが今さら、美幸を置いていくことなんてしないのにね。
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