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2019/02/20

2019.2.19

 のんびりと帰り支度をしながら、バイトのためにさっさと帰っていく友人を見送る。先日ようやく佐藤くんと話せて肩の荷も降りたわたしは、あとは三月の終業式を待つばかりだった。
 三月にはまた試験があるけれど、万年筆使いたさに勉強をするようになってから不安が減った。二月ももうすぐ終わろうとしている中、こうして余裕が持てることも佐藤くんに感謝していることの一つだ。
 荷物をリュックにしまい終わり、さて帰ろうととろとろしていたところで誰かが隣に立つ。
「よ、今大丈夫?」
「佐藤くん」
 リュックを背負った佐藤くんは、気楽に声をかけてくる。既に教室には大分人もいなくなっているのを見て、用件を聞くことにした。
「使ってるインクが切れそうでさ。土曜に買いに行くんだけど、よかったら一緒に行かないかと思って」
「…………えっ?」
「万年筆好きになりたいって言ってたじゃん? 専門店とか見た方が興味出るんじゃないかって」
 曰く、万年筆だけのフロアがあるような文房具店に行くらしい。それは非常に気にはなる。
 しかし。
「それって、二人で…………?」
「他に誰か誘う?」
 そんな、まるでデートみたいな。嫌な汗が背筋を撫でる。誰かを誘おうにも、佐藤くん以外に万年筆のことを話せていないのに。実質脅しのような誘いに喉が乾いていく。
 どうしよう、と悩んで、これ以上待たせるのも申し訳なくて、つい口をついたのは。
「わ、わかった。いいよ…………」
 そんな、勝手に圧力を感じて押しきられた気弱な言葉だった。

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