二月も終わりが見えてきたこの頃。日が沈むのは遅くなり、太陽がより長く顔を出してくれるおかげで大分暖かくなってきた。防寒具はまだ欠かせないものの、手袋をつけなくても手が痛くならないというのは重要なことである。
気温の変化以外にも、あちこちで春の芽吹きを感じることも増えた。新しく顔を覗かせる新芽たちは柔らかな緑色をほころばせ、枯れていた木にも少しずつ葉が見えはじめた。
そんな春の足音が聞こえる様子は楽しいものだ。春は嫌いではない。寒いのは苦手だし、暑いのだって得意ではないのだ。春の過ごしやすさは別格にいい。
「はっくしゅん!」
「うわ、大きいくしゃみ」
花粉症さえないのならば。
大きなくしゃみとともに出た鼻水をかんで、中を見てみると無色透明な粘液が張り付いている。風邪ではない、これは花粉症のものだ。意識をし出すととたんにあちこちが気になり始める。家を出てすぐにこれだから、春は好きにはなれないのだ。
「大変そうねー」
「なんで姉妹なのにあんたは花粉症じゃないのよ」
「知らないわよ、調べたことないし」
隣でけろりとしている姉が憎らしい。差し出されたティッシュを奪って鼻をかむ。かんでもかんでもなくならない鼻水と、隣で笑う姉。
春になるのだと、否応なく理解させられる季節は嫌いではないがどうしても好きにはなれなかった。
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