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2019/02/18

2019.2.18

「はーい、アンダインの二年生はこちらですよぉ~!」
 新学期、二年生になったコルネリアは教師らしい謎の生物に集められる。
 ぷよぷよとしたゴムボールのような黄色の体から、細く伸びた二本の腕。ゴマのようなつぶらな瞳と、小さな口。子供が描いた落書きが現われたようなそれは、生徒たちの前で声を張っている。
 魔法学校ブレイブアーク。そんな場所にはヘンテコな生物など溢れかえっている。しかしこれは。
「誰かの魔法……?」
「違いますよぉコルネリアさん」
「うわっ!」
 思わず呟いた言葉にゴムボールが飛んでくる。怒っている風ではないが、感情のわかりにくいゴムボールだ。
「先生はアンダインのみなさんの寮監。変身術を教えるイル先生ですよー!」
「い、いるせんせー……」
「正確にはイルズィオーン・メタモルフォシス。みなさんと実際に授業で会うのは四年生になってからですね!」
 笑顔のまま表情を変えないゴムボール、もといイルは自己紹介を済ませると再び先頭へと戻って高らかに言った。
「ようこそアンダインへ! 水のように清らかに、自由自在に変えられる未来のために、たくさん勉強をしましょー!」
 生徒たちは戸惑いのままに一斉に返事をする。そうして初めて寮へと踏み込んだ。これから六年間をこの寮で過ごすことになる。
 そんな貴重な第一歩は、不思議な生物との出会いで始まることになった。

イルズィオーン・メタモルフォシス作者:ちせり

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