2019/01/09

2019.1.9

 ゾッとするほど皮膚がピリピリと痛い。体は熱いのに脳は何故か寒いと認識する。飲んでも飲んでも、砂漠に水を溢しているかのように乾いていく喉。
 朝起きたらそんな状態で、もしやインフルかと嬉々として会社を休み病院に行くと、結果は無慈悲にも風邪。休むなら有給が必要になる。貯めて貯めて旅行に行くのが好きな分こんなことで使いたくなかったな、なんて思いながら結果を上司に報告すると、
『風邪? じゃあごめん来てくれる? 今日中の仕事多いんだよね』
なんて、病院よりもさらに無慈悲なことを言い渡される。行ってもいいけど、それでミスしてもわたしのせいにしないでほしい。
 恨み言を言うこともできないまま、フラフラとようやく会社にたどり着くと、溜まった仕事がどかりと机に積んであってうんざりした。ただの事務で人に会うこともないからと、人使いが荒いのは上司の悪いところだった。
 とはいえ、来てしまった以上やるしかない。急ぎの仕事をなんとか、動かない頭でゆっくり片付けていく。せめてミスだけはしないように、追い付かない分は上司に投げればいい。今日のわたしは猫の手なのだ。
 そうして仕事を片付けていると、ことりと缶のココアが机に置かれる。主を見れば上司だった。
「お疲れ様、ここまで終わればあとは私がやるよ。ごめんねー、熱あるのに呼んじゃって」
「ほんとですよ。インフルじゃなくてもきついんですよ! ココアじゃなくてご飯も奢ってください」
「へへ、熱下がったらね」
 上司は調子よく笑う。絶対忘れてなんかやらないからな。言質取ったぞ、と胸の中で思いながら帰りの支度をする。
 どんなに人使いが荒くても出来るならば応えてしまう、惚れた弱味とは恐ろしいものだ。風邪でふらふらなのに、貰ったココアとご飯の約束だけで治った気になってしまうんだから。

0 件のコメント:

コメントを投稿