12月に入って早一週間。今に来る冬休みを心待ちにしながら、幼い兄妹はクリスマスツリーを飾る。自分の身長よりも大きなものに思い思いに飾り付けていく。
「お兄ちゃんなにそれ」
「見りゃわかるだろ」
「やだー、かわいくない! 取ってよー」
抗議する妹の言葉も無視して、飾り付けに飽きた仁は特撮のおもちゃをクリスマスツリーに乗せていく。それに対抗した幸穂はミニチュア人形を着けていくものだから、クリスマスツリーはどんどん普通のものからかけ離れていった。
結局それらは、晩御飯の準備が終わった母に見つかって撤去することになってしまうが。
お互いがお互いのせいにしながら、兄妹は食卓に着く。今日の晩御飯は鮭の塩焼きだった。
「そういえば二人とも、サンタさんにお願いするものは決まったの?」
「あたしねー、ゲーム!」
「仁は?」
「遠野の心」
「物にしなさい」
「じゃあ遠野の服」
「遠野くんには絶対に言わないのよ」
幼少より同性愛者を隠さない仁は、さも当たり前のように母に話す。もはや慣れた母はそれらをどうするでもなく、ただ人としての身の振り方を諭すばかりに留めた。
幸穂はまだ恋を知らない。ただ兄を見て、そんなこともあるのかと思うばかりだった。
「あたしもお兄ちゃんみたいに女の子好きになったりするかな?」
こんな質問を、幸穂は度々兄にした。
それに兄は決まってこう返す。
「知らね。そんなもん心に従え」
その言葉を理解するには、幸穂はまだまだ幼かった。母はそんな兄の言葉は絶対に否定しなかった。
――女の子を好きになるってどんな感じなんだろ?
――サンタさんはそういうのはくれないんだよなぁ。
晩御飯を咀嚼しながら、幸穂はぼんやりと考える。兄と同じ世界を見たいような、見たくないような――そんな望みを叶えてくれる存在は、今のところなかった。
「お兄ちゃんなにそれ」
「見りゃわかるだろ」
「やだー、かわいくない! 取ってよー」
抗議する妹の言葉も無視して、飾り付けに飽きた仁は特撮のおもちゃをクリスマスツリーに乗せていく。それに対抗した幸穂はミニチュア人形を着けていくものだから、クリスマスツリーはどんどん普通のものからかけ離れていった。
結局それらは、晩御飯の準備が終わった母に見つかって撤去することになってしまうが。
お互いがお互いのせいにしながら、兄妹は食卓に着く。今日の晩御飯は鮭の塩焼きだった。
「そういえば二人とも、サンタさんにお願いするものは決まったの?」
「あたしねー、ゲーム!」
「仁は?」
「遠野の心」
「物にしなさい」
「じゃあ遠野の服」
「遠野くんには絶対に言わないのよ」
幼少より同性愛者を隠さない仁は、さも当たり前のように母に話す。もはや慣れた母はそれらをどうするでもなく、ただ人としての身の振り方を諭すばかりに留めた。
幸穂はまだ恋を知らない。ただ兄を見て、そんなこともあるのかと思うばかりだった。
「あたしもお兄ちゃんみたいに女の子好きになったりするかな?」
こんな質問を、幸穂は度々兄にした。
それに兄は決まってこう返す。
「知らね。そんなもん心に従え」
その言葉を理解するには、幸穂はまだまだ幼かった。母はそんな兄の言葉は絶対に否定しなかった。
――女の子を好きになるってどんな感じなんだろ?
――サンタさんはそういうのはくれないんだよなぁ。
晩御飯を咀嚼しながら、幸穂はぼんやりと考える。兄と同じ世界を見たいような、見たくないような――そんな望みを叶えてくれる存在は、今のところなかった。
この兄妹の昔の話。
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