メニュー

2018/12/04

2018.12.4

 あの子になりたい。
 いつも教室で静かに本を読んでいる彼女に。目立たなくて、大人しくて、だけどちゃんと中身がありそうなあの子になりたい。きっと、読んできた本の知識がたくさん詰まっているあの子に。
 あの子はいつも一人でいる。ハブられてるとかじゃなくて、一人を自分で選んでる。一体どうしたらそんな風でいられるんだろう。本で得た知識は、一人でいることへの恐怖や不安さえ無くしてくれるほど確かなものなんだろうか、羨ましかった。私は一人では生きていけない。一人で立つってどんな感じだろう。
 私は、いつもなんとなく生きてきて、成績はあまりよくなくていつもヘラヘラ笑って生きてきた。自分でもすごく中身のない人間に育ったと思う。それでも友達はたくさんいたし、この生き方を不満に思ったこともなかった。
 そんな私を、初めて彼女が見たときの目は今でも忘れられない。
 あれは明確な嫌悪の目。軽蔑して、どうして同じ空間にいるのか心底不思議そうにしていた目。
 それを見た瞬間、あ、って思った。
 すごい、この人は私と全く違う世界にいるんだって。私みたいにヘラヘラして周りに頼らなくても生きていけるんだって。
 電撃でも走ったような衝撃だった。そして、あの子がどんな風に生きてきたのかを知りたくなった。
 でも私は、知り合ってそこそこ経っても彼女に軽蔑されたままで、話しかけても大して返事がもらえない。
 だから、あの子になりたい。
 その世界がどんな風に映っているのかを見たい。
 それはどういうことかと言うと。
 つまり、私は恋をしている。


こちらよりテーマを拝借。

0 件のコメント:

コメントを投稿