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2019/03/07

2019.3.7

 学校に着いたのは八時十分を回ってから。多くの生徒たちと共に、葉桜になりはじめた桜に迎えられて正門を通る。
 下駄箱前はまだ大勢が立ち止まっていた。なにせ今日は始業式だ。あたしは美幸の手を引いて、別途先生が配っていたプリントを受け取りに行く。クラス発表の紙を見た方が早いのに、どうしてみんな掲示板の方を見たがるのか。不思議でならなかった。
 五十音で並べられた名前の一覧。その中でもあたしは優木だから、下の方を見ればすぐにわかる。二組に自分の名前を見つけると、そこからゆっくり上へ目線をずらしていく。
 辻浦……遠坂……佐藤……香川……そして、坂本。うじゃうじゃと並べられた名前の中から、その名前を見つける。
 坂本美幸。二組の欄に、確かにいた。
「美幸! やったよ、今年も同じクラス!」
「えっ? どこどこ~?」
「ほら、二組。綾と朱音も一緒」
 美幸と一緒に、一年生の時の友達も見付けていた。同じ二組で間違いない。これだけ揃っていれば、今年も楽しい一年になりそうだ。
 そう盛り上がろうとするも、美幸はまだ誰かを探している。他に一緒の方がいい友達なんていたっけ。
「んー、田川くん違うクラスだ」
「田川? 誰それ」
「バイト先が同じなの、よく話すんだけど」
「ふぅん……」
 知らない名前に眉を寄せる。美幸の知り合いは、ほとんど知っている。学校で話してる様子さえあれば、あたしが知らないはずもないのに。
 ――なんだろう、ムカつく。
 顔も知らない田川くん。後でこっそり見に行こうと、相手のクラスをマークした。

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