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2019/03/21

2019.3.21

 橘透也と別れて、次の授業に移った先で友人と落ち合う。旅行に行こうと言い出した張本人は、俺を見ると気楽に手を挙げた。
「よう、透也から話聞いた?」
「聞いた。旅行行くって?」
「そうそう、近場だけど」
 曰く、近くの温泉街に行って一泊二日で遊ぼうと言うことだった。部屋は旅館で四人一部屋。部屋が高いから温泉に浸かりながらだらっと遊ぼうということらしい。
 知り合って一ヶ月なのに、と思わなくはないが、だからこそゆっくり話したいんだろうとは思う。それに、こいつはどこか感性がじじくさいところがあった。
「行くのはいいけどさ。透也誘ってよかったのか?」
「ん、なんで?」
「いや、だって、ほら……」
「お前ら仲いいじゃん、片方だけは無理だよ」
 ほとんど毎日一緒にいるから、友人たちにもセット扱いされている。だからまとめて誘われるのは納得がいくが。
 企画主は透也の美貌になんの意識もしてない様子だ。透也に笑われたことといい、自分の方がおかしいのかと悩んでしまう。
 ――だからって、透也が美人だから同室は、なんて言えるわけないしなぁ。
 それこそ、色んな勘違いをされかねない。別に透也に劣情を抱いたことなんて……ない、ないのだ。
 うん、大丈夫。他が気にしてないなら俺も大丈夫。
 少し悩みは残りつつ、始まった授業に耳を向けた。

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