佐藤くんとの約束は、明日。
お小遣いの残高と相談しながら、わたしは学校帰りに服屋へと入る。安いチェーン店のそこは、適度に可愛らしくて、いい感じの値段をしている。あまり好みとは言えないが、無難な格好をするには丁度よかった。
趣味もなく、おしゃれを楽しむわけでもないわたしは、普段あまり服を買わない。遊ぶのが友達ならそれでもいいけど、相手がろくに話したことのない男の子だとそうもいかない。
――絶対、みっともない格好だけはできない!
そんな見栄からなけなしのお小遣いを持って服を選んでいた。デートだと舞い上がってると捉えられたら嫌だな。気合い入ってるって引かれたらどうしよう。そんな不安もあるけれど、みっともないと思われるよりはましだ。
行き先を調べた感じ、場所は比較的品のいい商店街。モデルルームのように綺麗な文具屋に合わせて、浮かないような服装を選んだ。
センスもないから、選んだのは結局かわいいブラウスとカーディガン。どうせコートに隠れちゃうのにな、なんて思いながら会計を済ませる。スカートはちょうどいいものがあるからそれでいいや、と帰路に戻る。
ついに、明日。佐藤くんと文具屋に行く。二人きりで。
なにを話したらいいんだろう。仲良くもない男の子と。はあ、と大きくため息をつく。万年筆のことを好きになりたいとは言ったけど、佐藤くんと仲良くなるつもりなんてなかったのになぁ。
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2019/02/26
2019.2.26
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