するすると万年筆を滑らして勉強すること数時間。わからない問題もたくさんあったけど、万年筆で書いていることが楽しくて苦にならなかった。
そろそろ終わろうかな、と思ったところで腕がほとんど疲れていないことに気が付く。いつもならすぐに腕が痛くなって勉強するのも嫌になるのに。書くのが楽しいだけじゃなくて、こんな効果もあるのか。
――おじいちゃんが持ってなさいって言うのもわかる気がする。
文字を書くことは多いのに、腕が疲れるのが早くていつも嫌になる。万年筆はそんなわたしを助けてくれる優れものだということに、きちんと使ってから初めて気付いた。それから、もっと使いこなしてみたいと思う。ノートはブルーブラックのインクがびっしりと染み込み、美しい藍色で彩られている。色ペンとはまた違った発色のよさにわたしは見入られはじめていた。
ひとまず休憩しようとリビングに行く。コピー機がごうんごうんと忙しなく動いている音を聞きながらココアを入れて、それからぼんやりと聞いてみた。
「なにしてんの」
「年賀状印刷してんの。あんたもあとで適当に持っていきなさい」
そういえばそろそろ年末になる。期末試験もあれば年越し準備もしなければいけないことに気が付いてうんざりし――すぐに万年筆を使ういい機会なのではないかと思い直す。
宛名くらいなら。書いてるところさえ見られなければ友達にはただの色ペンにしか見えないはず。
そう思うとなんだかわくわくしてきて、早く送る相手を定めなければと考えた。
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