2018/12/12

2018.12.12

「ねー今度カラオケ行こー」
「いいね、来週でいい?」
「オッケー」
 お昼休み、何気ない会話の流れから予定が決まる。忘れないようにメモしておこうと思って、買ったばかりのスケジュール帳とおじいちゃんから貰った万年筆を取り出した。
 家族以外の人の前に出すのは初めてで、ドキドキする。だから友達からは見えないようにこっそり、書いておこうとした。
 はずだった。
「あ、新しい手帳買ったの? なんか珍しいの使ってんじゃん」
「! こ、これは……」
「なんか大人っぽいの使ってる、どうしたのそれー?」
 覗き込んでくる友達から隠すのが間に合わなくて、あっさりと見つかってしまう。合皮のスケジュール帳に万年筆。それはあまりにも女子高生からは離れていて。
「これは……その、おじいちゃんが送ってくれて……」
「ふーん。使ってあげるんだ、偉いねー。そんなの絶対使わないよあたし」
「はは……ね、持て余しちゃうよね」
 曖昧に笑って同意する。
 けして嘘ではない。事実どう使っていいのかわからず持て余している。万年筆を使う場面なんてボールペンでいいわけで。
 だけど、心が痛かった。
 せっかく万年筆に慣れていこうと思ったのに、また遠くなった気がした。

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