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2019/04/03

2019.4.3

 わたしは祖父母のことを何も知らない。
 気さくなおばあちゃんと、寡黙なおじいちゃん。野菜を作っているから定期的に送ってくれるけど、農家だという話は聞かない。ただ家庭菜園が大きいだけだと、父は言っていた。
 祖父母について知っていることはそれだけだ。それ以上を知る必要もなければ、興味もなかったから。わたしはとても薄情な孫で、たまにしか来ないこの家は宿程度にしか認識してこなかったのだ。
 そんな弊害が、今、出ていた。
 寛ぐお父さんと、おばあちゃんの手伝いをするお母さん。
「…………」
 両親を頼れそうにもなくて、居心地の悪さを感じながらテレビを見ることしかできない。万年筆ありがとうと言うだけなのに。
 おじいちゃんは依然新聞を読んでいる。難しい顔で、ルーペを動かしながら。そんな状況で話しかけるなんてできなくて。
 ふぅ、とため息を着く。本当にいつもわたしは意気地がない。ただ一言伝えるだけなのに。
 ――そういえば、おじいちゃんは万年筆を持っているのかな?
 もだもだしていると、ふと浮かんだ疑問。とはいえ、すぐに聞くこともできなくて。
 ――後でおばあちゃんに聞いてみようかなあ。

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