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2019/03/24

2019.3.24

 五月になり、すっかり夏の陽気な日々の中ゴールデンウィークを迎える。旅行にはもってこいの青空の下、集合場所へと降り立った。
 有名な場所なだけあって綺麗に整った駅と、反面どこか寂れた雰囲気のある商店街が伸びている駅前。待ち合わせ場所はと探せば、よく目立つ橘透也を目印に、すでに三人が集まり終わっていた。
「悪い、俺が最後か」
「おっす。お前家遠いもんな」
「早くには出たんだけどなあ」
「間に合ったんだからいいよ。行こうぜ」
 発起人、溝口泰斗を先頭に歩き出す。目的は商店街を通り抜けた先にある旅館。観光をするにもまず荷物を置こうと言うことだった。
「いやー、楽しみだな温泉」
「……お前やっぱり入るの」
「まだそんなこと言ってんのか」
 泰斗の後ろで、こっそり透也と話す。
 透也のことは男だと理解はしている。だから多分、その時になれば平然と一緒に温泉くらい入るだろう。とは言っても、抵抗がないわけではない。
 しかし透也は呆れたような顔をした後、その女と見紛う美貌で弧を描いて、「スケベ」とからかうように笑うばかり。
 そうやってからかうから、俺は平静でいられなくなるんだと言う文句は言いたくても言えなかった。

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