ぱちり、と目が覚める。そこに広がっているのはなんてことはないいつも通りの部屋。転がっている鞄は昨日のままで、芝生などは見当たらない。
青空を見ていた。一点の雲さえない、青の絵の具を溶かしたような晴天。見上げている私は芝生の上に立ち、目に焼き付けるように瞬きもせずに空を見つめていた。なにかに強制されるかのように、広大すぎておぞましいその空を。
それが夢だったと理解するのは早かった。当然だ、あんなにも広くて、空と芝生以外ない場所などどこにもない。そんな場所に一人で立ち尽くすなんて、普通あり得ない。
そうは思っても、なんだか少し怖さが残ってしまって、携帯の電源を入れる。立ち上げた画面で夢占いを検索すれば、信憑性があるのだかわからない記事がたくさん出てくる。不安になる夢を見たときに、こうして調べるのは習慣だった。
ぱっと一番上に出てきた記事を読んでみる。青空を見上げる夢は未来を表す。空を見上げることそのものが未来へ進んでいることの表れ。悪い夢ではないという。
でも私は、曇りのない空を恐ろしいと感じていた。
――未来が怖い? それは進むことが? それとも、滞りなく済んでしまうことが?
何かが起こってほしいと、考えてしまっている。それは期待なのか恐れなのか、わからないが私が望んでしまっていることなのだろうか。
体を起こして、うんと背筋を伸ばす。夢を真に受けるべきじゃない。ただ心当たりがあるのは確かだ。
――ようは、何かが起こっても対処できるようにすればいいんでしょ。
そんな警告の夢だったと考えて、今日の仕事へと向かう支度を始めた。
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