「13お年玉ちょーだい!」
「はぁぁ!?」
1月1日。日本時間でその日を迎えたとたん、13は子供たちにわらわらと群がられる。アタリ、コクリコ、リリカ、メグメグ、テスラ、きらら、それに比較的大きいのほとまといまで。
普段13を嫌うアタリさえも無遠慮にお年玉とやらを強請りに来て、あまりの鬱陶しさに【周】カードをちらつかせ脅しながら訳を聞く。
「お年玉って、なんだそりゃあ!?」
「なんだよ、知らないのか? 日本じゃ大人は子供にお年玉を渡さないといけないんだぜ」
「大人しくお金出してホシイでないと斬るそうじゃなくてもキル」
「コクリコもおとしだまほしー」
「うるせぇいっぺんに喋んな!」
話を整理すれば、ようは金を寄越せということらしかった。既に忠臣、ルチアーノやジャスティスを始め一通り貰った後で、13が最後らしい。イイヒト揃いのヒーローたちが快くお年玉を渡す様子は目に浮かぶようだ――グスタフまで渡しているのは、少し意外だったが。
他のヒーローが出しているのに、13だけ出さないのでは懐の狭さを露見させて気分が悪い。そう考えて渋々と財布を取り出す。年末年始に備えて多目に入れていたのが幸運したのか災いしたのか、全員に均等に与えると厚かった財布が空になってしまう。
「13ありがとう!」
「おーおー、せいぜい感謝しろよ」
金を受けとるなり、現金に無邪気な笑顔で子供たちは去っていく。あのお金でなにを買うのだろうか。アタリやメグメグやテスラならばわかりやすいが、あとは何も想像がつかなかった。
「ヤサシイノデスネ」
「うわっ!? おいカタコトマシーンいつから見てた!」
「群ガラレテイタ トコロカラ スベテ」
「助けろよ! お前もお年玉欲しいのか!?」
「イリマセンヨ。コドモデハ アリマセンノデ」
背後から急に声をかけてきた少女型AIは、不気味なほど穏やかに13を見る。
「本当ニ 死神ラシクハ アリマセンネ」
クスクスと笑う彼女に苛立って予告なく銃を撃つも軽やかに避けられてしまう。いやに恥ずかしくなって、さらに追加で撃ってみた。彼女にはなにも当たらない。
「うるせぇな! ガキ共がうざかっただけだよ! お前も散れ!」
素早い彼女は器用に全弾避けてしまう。アリーナ外でルールに縛られない状態のVoidollに、#コンパス内で勝つことは概ね不可能だった。
性能を見せつけながら去っていく彼女に苛立ちながら、13はしばらくどうやって金欠を乗り切ろうか考えた。
万年筆で書いたSSを纏めています。 Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. (当サイトのテキスト・画像の無断転載・複製を固く禁じます。)
メニュー
▼
0 件のコメント:
コメントを投稿