どくどくと痛いほど心臓が動く。恐ろしかった。この名前しか知らないクラスメイトに万年筆のことを暴かれることが。
次に何を言われるんだろう、と覚悟する。彼は背負っていたリュックを隣の席にどかりと置いて、筆箱を取り出した。その中から一本、プラスチック製の万年筆を出してくる。
「俺も持ってるんだ。初めて見た、他に持ってるやつ」
「佐藤くん、も…………?」
艶やかな白の軸に、パステルブルーのかわいい万年筆。わたしの持っているものを恐る恐る見せると、彼はかっこいいと率直な感想を言った。
「え、どんなときに使うの?」
「決めてないな……ノート取ったり、勉強するときが多いかな」
「ノート取るのに使ったら直せなくない?」
「修正テープ使えばいいし」
どう使っていいかわからなかったわたしにとって、それは驚くべきことだった。
彼のノートを見せてもらうと、その時々に違う色で書かれた文字たちが生き生きと載っている。かわいいな、と思った。万年筆で書くと、こんなノートになるんだ。
「腕痛くならないからいいぜ、板書多いときとか」
「そうなんだ……」
「遠坂はなにに使ってんの?」
逆に聞き返されて言葉に詰まる。なんとか「もらったばかりで、使ってないの」と返すと彼はそうかと笑った。
「悪い、珍しくて思わず話しちゃったよ。これからバイトだから、じゃあな」
「う、うん。ばいばい」
忘れものを取り戻して、彼は颯爽と去っていく。それと同時にわたしの緊張も解れた。
びっくりした、佐藤くんと話すのなんて初めてだったから。
――勉強するのに使うのか……。
先生に提出するようなものに使うのは、少し勇気がいる。でも問題集とかに使うなら、わたしでも出来るかもしれない。
ちょっとずつ、使える場所を増やしていかないとな。なんて、普段勉強なんてしないのに少しだけやる気が湧いてきた。
次に何を言われるんだろう、と覚悟する。彼は背負っていたリュックを隣の席にどかりと置いて、筆箱を取り出した。その中から一本、プラスチック製の万年筆を出してくる。
「俺も持ってるんだ。初めて見た、他に持ってるやつ」
「佐藤くん、も…………?」
艶やかな白の軸に、パステルブルーのかわいい万年筆。わたしの持っているものを恐る恐る見せると、彼はかっこいいと率直な感想を言った。
「え、どんなときに使うの?」
「決めてないな……ノート取ったり、勉強するときが多いかな」
「ノート取るのに使ったら直せなくない?」
「修正テープ使えばいいし」
どう使っていいかわからなかったわたしにとって、それは驚くべきことだった。
彼のノートを見せてもらうと、その時々に違う色で書かれた文字たちが生き生きと載っている。かわいいな、と思った。万年筆で書くと、こんなノートになるんだ。
「腕痛くならないからいいぜ、板書多いときとか」
「そうなんだ……」
「遠坂はなにに使ってんの?」
逆に聞き返されて言葉に詰まる。なんとか「もらったばかりで、使ってないの」と返すと彼はそうかと笑った。
「悪い、珍しくて思わず話しちゃったよ。これからバイトだから、じゃあな」
「う、うん。ばいばい」
忘れものを取り戻して、彼は颯爽と去っていく。それと同時にわたしの緊張も解れた。
びっくりした、佐藤くんと話すのなんて初めてだったから。
――勉強するのに使うのか……。
先生に提出するようなものに使うのは、少し勇気がいる。でも問題集とかに使うなら、わたしでも出来るかもしれない。
ちょっとずつ、使える場所を増やしていかないとな。なんて、普段勉強なんてしないのに少しだけやる気が湧いてきた。
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