メニュー

2018/12/01

2018.11.8

 誕生日祝いが届いた。毎年と同じように、野菜と、お菓子と、お金が段ボールに詰められて。祖父はいつも、こうやってわたしの誕生日祝いを送ってくる。
 だけどその中に、一つ見慣れないものがあった。
 万年筆だった。
 綺麗な箱に丁寧に収まった、青く光る万年筆。キャップを開けると、金に輝くペン先が覗く。一緒に入っていたインク瓶にはブルーブラックと書かれたラベルが貼ってある。
 一緒に入っていたメッセージには、「そろそろ年頃だから持っていなさい」とだけ書かれていた。
 こんなもの使ったことがないから、慌ててスマホで調べてみる。インクが付属してるから、これは”コンバーター”がついているもののようだ。できるだけ毎日使った方が、インクが詰まらなくていい、等々、調べたらいろんなものが出てくる。
 なるほど。でも、授業のノートにわざわざこんな仰々しいものを使う必要はないし、それ以外で書く用事もない。こんなもの何に使ったらいいんだろう。

「お母さん、万年筆って、なに書けばいいと思う?」
「おじいちゃんに手紙でも書いたら?」
「住所知らない」
「教えてあげるから。万年筆ありがとうって送っておきなさい」

 おじいちゃんに手紙なんて書いたことがない。
 そもそも便せんあったっけとひっくり返してもなかったので、何故か余っていたはがきを出した。
インクを補充して、試し書きをしたあと、はがきと向き合う。なにを書いたらいいんだろう。とりあえず書き出しはこれでいいや。

ーーおじいちゃんへ。万年筆ありがとう。

0 件のコメント:

コメントを投稿